電線にとまった鳥が感電しない理由とその危険性は?

野生動物が住む場所を追われたり、食べ物を探して街にやって来たりと、人を翻弄するニュースをたまに目にしますよね。

例えば海外のハプニング特集で電柱に登ったクマやサルが電線に触れ、感電する映像を見かけます。感電して落ちてくる動物たちの姿は何とも言えない悲しさがこみ上げてきます。

一方、日常生活のなかでカラスやハトなどの鳥が羽根を休めるのに、電柱や鉄塔の電線にとまっている光景を見かけることがあります。鳥は感電することもなく、悠悠と飛び立っています。

なぜ、クマやサルは感電するのに、鳥は感電しないのか…。人も空を自由に飛ぶ日が来るかもしれないので、その日に備えてどんな状態なら電線で休んでも感電しないのか知識を蓄えておきたいところです(笑)

ここでは、感電の危険性と鳥がなぜ感電しないのかをご紹介します。

 

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感電について

空を見上げると、電柱や送電線に張り巡らされた何本もの電線や送電線を見ることができます。

電気が作られる場所と言えば発電所ですよね。発電所で作られた電気は昇圧され、数万ボルトから最大50万ボルトという高電圧で送電されたのち、使用場所に合わせた電圧に下げられます。

一般家庭の使用電圧は、100ボルト(以下、V)から200V。電気の分野では「低圧」という区分に分けられますが、「低」という字が付く電圧だからと言って、感電しても平気だろうと思わないで下さい。

そもそも、感電とは身体に「電流」が流れて痺れたり、ショックを受けたりすることです。なので、いくら電圧がかかったとしても、電流が流れなければ感電はしません。

身体の状態によって流れる電流は異なるので、100Vや200Vでも感電すると命に危険が及ぶこともあります。

 

ちなみに、感電した人が電流の大きさによってどんな状態になるのかは次の通り。

電流値 症状
1mA 感じる程度
5mA 痛みを覚える
10mA 我慢できない
20mA 痙攣、動けない
50mA 非常に危険
100mA 致命的

※mA=ミリアンペア(電流の単位)

 

感電した時、身体の状態によりどれぐらいの電流が流れるのかは、その時の条件によりますが、参考書などで書かれている人体の条件で計算してみるとこんな感じになります。

<条件>
皮膚の抵抗値:2500Ω
体内の抵抗値:1000Ω
環境の抵抗値:2000Ω(履き物や地面の状態)
※Ω(オーム)=抵抗の値

電圧:100V

【参考】電流=電圧÷抵抗
※オームの法則

 

<流れる電流値は>
電流=100(V)÷5500(Ω)≒0.018A(18mA)

というわけで、我慢できない、あるいは動けない状態となります。なお、身体が雨などで濡れている場合は、上の条件の抵抗値は約半分となり、身体は非常な危険な状態にさらされます。

 

以上、感電の危険性はお分かりいただけたかと思います。

 

 

なぜ鳥は感電しないの?

さて、前の章で感電のお恐ろしさをお分かりいただけたことと思います。家電製品を含め電気の取り扱いには、是非ともご注意ください。変に触って壊したうえ、自分がケガをするとか勿体ない事この上ないので。

さて、家庭では主に100Vが使用されています。しかし、家庭内に入ってくる前の電圧は、効率の関係により、さらに高い6600Vという電圧で送られています。

この6600Vは電気の分野では「高圧」という区分に分類されています。聞くだけでもヤバそうなのに、その電線にとまっている鳥がなぜ平気なのか…。

結論から言うと、電線にとまっている鳥には「電流」が流れていないからです。なぜ電流が流れないのか…。これを紐解いていきましょう。

まず、下の画像を見てください。

電柱や鉄塔の電線は3本1組で送電されています。鳥が感電しないのはその“一本だけ”にとまっているから感電しないのです。

電流は水の流れ同様、高い方から低い方へ流れる性質があり、なおかつ流れやすいルートを通っていきます。

なので、1本の電線上で鳥が触れている両足の電圧の差がほとんどなく、電圧は“0”と言ってもいいほど。そして、電流は流れやすいルートを通るという性質から抵抗のある鳥より、抵抗のより少ない電線内を通ることになり鳥には電流が流れず感電しないというわけです。

ただし、これはあくまでも“1本だけ”にとまっている場合の話です。次章で、なぜクマやサルが電線の上で感電するのかをご説明します。

 

クマやサルが感電する理由は?

前の章で鳥が“1本”の電線だけにとまっている場合は感電しないと述べました。ということは、ご察しの通り2本の電線に触れた場合、いかに鳥と言えど感電してしまいます。同様に、クマやサルも感電するのは2本の電線に触れてしまうからです。

では、なぜ2本の電線に触れると電流が流れるのかというと、それぞれの電線に触れた場所に電圧の差があるからです。例えば、クマが2本の電線に触れた時、2つの接触点で高い電圧と低い電圧が生じ、クマの体の中を電流が流れ感電します。

逆に、クマやサルが一本の電線にぶら下がってさえすれば、感電することはないのです。

 

●まとめ

いかがでしたでしょうか?

もし人が空を自由に飛ぶようになり、危うく電線に接触しそうになったとしても、複数の電線に触れなければ何とかなるということがお分かりいただけたのではないでしょうか?

まあ、人が飛ぶ時代が来ても、そもそも電線や送電線には近づかないのが一番なんですけどね^^